「困ってるひと」大野更紗著

大野更紗著「困ってるひと」。深く揺さぶられ、限りなく勇気付けられました。
(以下、青字部分は、すべて本からの抜き書きです。)

著者は、世にも希な難病にかかり「心身、住居、生活、経済的問題、家族、わたしの存在にかかわるすべてが、困難そのものに変わった(P.5)」という若く聡明な女性です。

その症状と検査・治療の壮絶さを読むと、他のどんな病気も「この病気と比べれば、まだ楽だ」と思えてしまうほどです。にもかかわらず、大野さんは、次のように綴ります。

それでも、いま、「絶望は、しない」と決めたわたしがいる。こんな惨憺たる世の中でも、光が、希望があると(略)疲れきった顔のオジサンに飛びついて(略)女学生を抱きしめて、「だいじょうぶだから!」と叫びたい気持ちにあふれている(P.6)

略)病の痛みや苦しみは、その人だけのものだ。どれだけ愛していても、大切でも、近くても、かわってあげることは、できないわたしの痛みは、苦痛は、わたししか引き受けられない(P.55)
(病態は)(略)かなり大ざっぱに体感だけを表現すれば、24時間365日インフルエンザみたいな感じだろうか。まあ、そこは仕方ない。治らないものは治らないんだから、仕方ない(P.287)

わたしは何故かこれまで、難病をカミングアウトするかどうか、という類の葛藤を感じたことがない。(略)だって難病も障害も、べつにその人は悪くない選んでもいない。地球上の人類の中で、一定数の確率で誰かが負うことになる「難」のクジを、たまたまひいてしまっただけである。(略)お財布の中の運転免許証やTUTAYAの会員証に、障害者手帳が加わっても、わたしはわたしである(P.179)

思い立ったら一直線という性分(P.82)」の大野さんは、想像を絶する困難の中でも医療や福祉の問題を冷静に観察、分析し、多くの問題提起をしています。

優しく、まっすぐ目を見て話してくれる医師が少ないこと。(P.59)
何時間も持った末の「五分間診療」に患者も医師も疲れ切っていること。(P.81)
役所に福祉サービスを申請することがどれ程大変かということ。(第10章、第14章)

(略)自力でネットをつなげて、わけのわからない情報にふらふらさせられるよりも、はじめから患者がより正確な情報にアクセスできる環境をきちんと整えたほうが、医学的見地からも合理的であると思うのだが。(P.83)

今思えば、あの病院は、わたしにいろんな大事なことを教えてくれた。重度の障害や、難病、あるいは精神疾患を抱えた人たちが、日本社会の中で、どういう扱いを受けているか。(略)弱者にされるとは、どういうことか。(P.101)

先生もサイババではなく人間であるので、その時々の機嫌や事情というものがある。先生が激務の中でいろんなことを忘れたり誤解したりするリスクを計算に入れて、備えておかなくてはならない(P.300) 等々。

泣いても、絶叫しても、薬の副作用で危篤状態になっても、死を願う時があっても、それでもなんとか自分の人生を生きていこうとする大野さん。その体験をユーモアに包んで語ることのできる大野さん。尊敬します。

追記:大野さん・平川 克美氏・六車 由実氏の対談→こちら(医学書院公式サイト)

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ポフラ社から出ています。是非買ってお読み下さい。
既に文庫化。(→アマゾン





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しばさんの読書量

自分では見つけて読むことのない作家の本を 
色々ご紹介下さって有難う御座います。

自分で選ぶものどうしても偏りますので
チェックして 本の選択時 参考にさせて頂きます。
しばさんの読書量が凄いなぁと感心もしています。

「好きこそ」なのでしょうが、
どんなふうに本を選び どれくらい読んでらっしゃるんですか?
よかったら、教えてください。

本を読むこと

私の好きなことが、少しでもお役に立てたなら、うれしいです。
はい。本は、好きだから読んでいるだけで、「読まなければ」とか「○○のために」と思って読むことは、全然ないです。

どう選ぶか、ですか?
私は、書評を読むのも好きなんです。新聞も雑誌もネットも書評本も。
「困ってる人」も最初は書評で知りました。
自分が好きな作家が好きだという本にも外れがありませんね。

本屋では、目次と前書きと後書きを見て、中をパラパラ見れば、まず外れません。
でも本屋も選びます。地理的に行きやすくて好きなのは、丸善です。

どのくらい読んでいるかは、自分でもわかりません。
数冊の本を同時進行で読みます。
音楽だって気分に合わせて、一日の内にも色々聴きますよね?

レシピ本、絵本、写真集なんかも好きです。
著者には申し訳ないですが、ほとんどは図書館で借りています。
読んだ本の内容は、ほとんどみんな忘れます。

時間の使い方

複数のブログを書き・コメントに返信し、沢山の本を読み、料理を作り・・・・・スロージョギングなど・など。
全て好きな事 充実していらっしゃるのですね。
時間の使い方がお上手でもあるのだと思いました。
全ての人に平等にある一日24時間 大事にしたいと
改めて思います。

No title

ぜひ、読んでみようと思います!

私も化学物質過敏症が徐々に進行して、今では禁煙席でも喫煙席の煙で咳き込む、マジックの溶剤の臭いで喉が腫れるまでになりました。
電車に乗って出かけると、高確率で頭痛が出ます。
副作用も出やすく、病気以上に辛いのに、医者は全然理解してくれません。
一度、大量の服薬をして、自分で味わってみろ!と心の中で叫んでいます。

でも、介護やうつや病気をした人は、他人の痛みを感じる事ができるように、宇宙の意思に選ばれた人なんじゃないかな?って最近考えます。
健康で、他人の感情に鈍感な人は、選ばれる資格がなかったんですよ、きっと。

くろまめさん kimiさん

くろまめさん
私は自宅介護ではないので、お金はなくとも時間はある身だというだけです。
興味が、all or nothingでバランスの悪い人間なので、よく「そんなことも知らないの?!」と驚かれます。
料理は、最近は、手抜き一筋です。

kimiさん
それは大変です。そういう症状は、目に見えないので、余計に理解されにくいですよね。
病気知らずの頑丈な方は、「何を神経質なこと言ってるの?気のせいよ」ぐらいにしか思いませんしね。
45〜55才だと、どんな不調も「ただの更年期障害でしょ?」と言われるし・・。中々辛いところがあります。

神谷美恵子(医師。作家)が、「人は繊細だからこそ心を病むのであって、鈍感な人は、その鈍感さのお陰で何とか病まずに済んでいるに過ぎない」という内容のことを書いています。(出典、見つけられません。)

それを読んだ時は、私も若く病気知らずだったので、この言葉を忘れちゃいけないなと思いました。

化学物質過敏症

「化学物質過敏症」で長く苦しまれていて 「漢方薬」で治療効果があり 安定しているという患者さんとお話しする機会がありました。
天候・風向きなどで はるか遠くの化学物質の拡散でさえ 敏感に感じるとのことでした。

誰にでも何時発症するか解らないものだそうですので 他人事ではないと思います。
自分がその立場になってみなければ どれだけ不便で苦しい生活を強いられるか 測りかねますけれど。
プロフィール

<しば>

Author:<しば>
私は認知症について希望を持てる情報を集め、共有している一介護家族です。医療・福祉の従事者ではありません。

特定の医師・治療法等へのこだわり、信仰する宗教はありません。
認知症に関連するビジネスもしていません。
掲載する情報は正確・公正であるよう努めています。

このブログ内の記事は、出典さえ書いて頂ければ、自由にコピーして資料等として使って頂いて構いません。リンクもご自由に。

’13年5月から「レビー小体型認知症介護家族おしゃべり会」(全国に広がる家族会)公式サイトに「しば記者デスク」「体験記」というコーナーを頂き記事を連載中。(こちらの記事は会に著作権があります。)

ツイッター:しば@703shiba

*レビー小体型認知症の症状やチェック方法は、カテゴリの一番上「症状チェック」を。


母 '05パーキンソン病と診断。’10.3月要支援2→要介護4へ激変。5月レビーと診断。2度の転倒骨折入院の後、自宅介護が困難に。8月末グループホーム入所。’11年3月に圧迫骨折で寝たきりに。7月特養入所・要介護5に認定。'12年要介護4に回復。’14年なぜか要介護5になるが穏やかで普通に会話が可能。
S13(1938)年生まれ。

父 ’10年9月ピック病(前頭側頭型認知症)と診断。
昭和2桁生まれ。

私 ’60年代生の女性。300km離れた所に住む。日々の介護はきょうだいに頼り’10年から月1回、’12年から1〜2ヶ月に1回帰省。

好きなこと:読むこと・書くこと・草花の写真を撮ること等々。

*記事に付けた花の写真は私が撮影したものです。

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