7月の帰省3日目(1)金婚式の贈り物

夫を早朝に駅に送って行った。夫はそのまま遠い職場に向かう。
母も父もみんな久しぶりに夫と会えたことを喜び、会話を楽しんでいた。
兄も元気に通所授産施設(平日はショートステイ利用。)へ出掛けて行った。
私が久しぶりに短く切った髪が涼しそうだ。


母の所へ行くと、昨日とは表情が全く違い、穏やかだ。
自分からは、あまり話さないが、話し掛ければ、普通に返事が返って来る。
冗談を言ったり、ふざけると笑う。
昨日は、3ページしか見なかった岩崎ちひろの画集を「可愛いねぇ」と言いながら楽しむ。
神経がゆるんでいくのを感じる。

「お父さんとお母さんの(金婚式記念の)写真・・、ある?」
「ここにあるよ。本当に良い写真だねぇ!お母さん、美人に写ってるよ」
写真撮影は、私と妹からのプレゼントだった。メイクも衣装のドレスも込みだ。
母は、この写真を痛く気に入って誰にでも見せてきた。
見た誰もが、「何て素敵な夫婦!」と写真を誉めた。

「あそこにも泊まらせてくれたね・・」
ちょっと豪華なホテルでの一泊も一緒にプレゼントした。
それが親孝行らしい親孝行(贈り物)をした最初で最後だ。
「良かった?」
「良かったよ~!・・・あんたは、私とお父さんのためなら何でもしてくれるんだね」
「○○(妹)もだよ。・・お母さん、その何百倍も何千倍もしてきてくれたじゃない!」
「もう何にもできなくなっちゃった・・」
「お母さんが今までしてくれた分、今度は、私がする番だよ!」
「馬鹿なこと言うもんじゃないよ。何にもいらないよ。して欲しいことなんてないよ」

母の体に顔を埋めて、幼児のように声を上げて泣く自分を想像した。
けれども涙は、一筋も出て来なかった。


1時間半程すると急に険しい顔に変わる。
「バスに間に合わない」「どうしてもトイレに行く」「足が痛い」などと叫ぶように、執拗に繰り返す。
なだめていると、私が居ないかのように人を呼ぶ。
それは「お~い!」だったり「助けて~!」だったりする。
母が少し落ち着くまで居て、納得した所で、一旦帰った。


母の部屋があまりにもシンプルなので、もう少し賑やかにしたいと思い、大きな店に行って探すが、思ったものがない。
店の一角にあった百円ショップに行くと、探していた造花も鉄の風鈴もあった。
叫んで人を呼んでいたら疲れると思い、「これを鳴らして」と言うつもりだった。
なるべく職員の神経に触らないように低くてきれいな音の風鈴を選んだ。

実家の玄関に飾ってあった絵も外して持って行くことにした。
2年前、私の子供が、母のリクエストに応じて描いた。
子供(母の孫)の絵を絶賛する母に、子供は言った。
「ばあばの好きなもの、何でも描いてあげるよ」
「ほんと~?!わぁ!嬉しい!そうだ。お花畑の中にいる女の子を描いてくれる?」

例え母自身が絵を楽しめなくても、訪ねた人や職員の心が和めばいいと思った。
母は、孫からも愛され、慕われる人だったのだと職員に知って欲しかった。
「え~?これ、お孫さんが描いたの?」
そう、母に話し掛けて欲しかった。

P1010667.jpg
コスモス畑
両親と兄は、毎週末、花畑などを見に、
遠くまでドライブするのが長年の習慣だった。
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プロフィール

<しば>

Author:<しば>
私は認知症について希望を持てる情報を集め、共有している一介護家族です。医療・福祉の従事者ではありません。

特定の医師・治療法等へのこだわり、信仰する宗教はありません。
認知症に関連するビジネスもしていません。
掲載する情報は正確・公正であるよう努めています。

このブログ内の記事は、出典さえ書いて頂ければ、自由にコピーして資料等として使って頂いて構いません。リンクもご自由に。

’13年5月から「レビー小体型認知症介護家族おしゃべり会」(全国に広がる家族会)公式サイトに「しば記者デスク」「体験記」というコーナーを頂き記事を連載中。(こちらの記事は会に著作権があります。)

ツイッター:しば@703shiba

*レビー小体型認知症の症状やチェック方法は、カテゴリの一番上「症状チェック」を。


母 '05パーキンソン病と診断。’10.3月要支援2→要介護4へ激変。5月レビーと診断。2度の転倒骨折入院の後、自宅介護が困難に。8月末グループホーム入所。’11年3月に圧迫骨折で寝たきりに。7月特養入所・要介護5に認定。'12年要介護4に回復。’14年なぜか要介護5になるが穏やかで普通に会話が可能。
S13(1938)年生まれ。

父 ’10年9月ピック病(前頭側頭型認知症)と診断。
昭和2桁生まれ。

私 ’60年代生の女性。300km離れた所に住む。日々の介護はきょうだいに頼り’10年から月1回、’12年から1〜2ヶ月に1回帰省。

好きなこと:読むこと・書くこと・草花の写真を撮ること等々。

*記事に付けた花の写真は私が撮影したものです。

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