高次脳機能障害と認知症

追記:コメント欄をお読み下さい。介護に疲れたという方に向けて書きました。
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高次脳機能障害は、脳卒中(脳梗塞、脳出血他)や交通事故などの脳の怪我他により起こり、症状は、どこをどれだけ損傷したかによって、一人ひとり違います。

外見は健康な人に見えるため、職場等で「なまけわがまま」等と誤解され、大変な苦労をされている方が多いそうです。(病気と分かる前の若年性認知症と似ています)

下記の前頭葉に関わる高次脳機能障害の主な症状(橋本圭司著「高次脳機能障害がわかる本」第4章から)を見ると各種認知症の症状と非常に似ています。(詳細は下に)

これらは、高次脳機能の中でも特に、周囲の人の理解接し方、生活の工夫や意識的な訓練で改善しやすい症状なのだそうです。(これも認知症によく当てはまると思います)

認知症も脳全体がダメになるわけではなく、ほんの一部の機能が低下し、下記のような症状が出ます症状と知ることで、より冷静になれます。介護者が、冷静に適切に対応することで精神的な落ち着きを取り戻し、困った症状も徐々に治まりやすいです。

子育てにも似ています。子ども時代を思い出してみて下さい。親から感情的に怒鳴られて、素直な気持ちで従った記憶があるでしょうか。認知症の高齢者も全く同じです。


    「(前頭葉に関わる)高次脳機能障害の主な症状」by 橋本圭司氏

1. 易疲労性(精神的に疲れやすい) 
  昼寝/あくび/動作がゆっくり/反応が少ない/会話についていけない

2. 意欲・発動性の低下(やる気が出ず、自分から物事を始められない)
  考えやアイデアが浮かばない/表情が硬い/他人に興味がない
  自分から起きて、その日の準備ができない/話し手に目を向けない

3. 脱抑制・易怒性(感情やエネルギーをコントロールできない)
  後先考えない・場違いな・人を怒らせたり傷つける言動/じっとしていられない
  イライラ/短気/自分への否定的発言を認められず許せない/計画を途中で投げ出す

4. 注意障害(ずっと注意を集中していることが困難)
  注意散漫/ミスが多い/集中できない/話についていけない/気が散りやすい
  言われている事に関心を示さない/ぼんやりしている/課題に時間がかかる

5. 失語(言葉を理解、表現することが難しくなる)
  人の言葉が理解できない/質問に答えられない/本が読めない/手紙が書けない
  本人は流暢に話しているつもりだが周りは何を言っているのか理解できない

6. 記憶障害(新しい情報を覚え、必要な時に取り出すことができない)
  ついさっきのことを忘れる/人の名前や作業の手順が覚えられない。
  作業中に妨害が入ると、何をしていたか忘れてしまう/同じ間違いを繰り返す

7. 遂行機能障害(計画したり問題解決したりすることができない)
  優先順位がわからない/目標を自分で設定するのが難しい
  多方面からの問題解決ができず、1つできないとお手上げになってしまう  

8. 病識の欠如(自分の障害に気づかない。それを説明できない)
  自分は問題がないと思っており、問題を指摘されると腹を立てる
  自分は何でもできると思い、治療やリハビリを拒否する
  本人と周囲で認識のギャップがあり、お互いに信頼感がない
  障害をどれだけ説明しても理解せず、とても無理な車の運転などしようとする


3は、ピック病(前頭側頭型認知症の1つ)によく起こる症状です。
5は、脳血管性認知症の一部や前頭側頭型認知症の一部に起こる症状。
6の記憶障害は、アルツハイマー型認知症の主症状です。
8:レビー小体型認知症では、かなり進行しても病気の自覚があると言われます。
 レビー小体型では2の意欲の低下や4の注意障害が目立ち、記憶障害は目立たない方も
P1000167_2.jpg
レビー小体型認知症(パーキンソン症状がある場合)の立ち姿。
パーキンソン病と誤診されていた要支援1の頃。歩き方は小股、すり足。手を振らない

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体は元気な認知症

高次脳機能障害の兄とアルツハイマーの進んだ母のやることなすことそっくりです。脳血管性の父がほんの少しまとも。
今日も簡単な仕事を頼みましたが、だめでした。そして、余計なことは有り余るほどやらかして、台無しにする…の繰り返し。なにひとつまともにできません。感情的にならないよう我慢することで、私の方は気が狂いそうです。
欲求が制御できないので、食べることに貪欲。そして食べたことも忘れる。食べ物を隠しても探して食べてしまうし、平気で嘘(本人は嘘をついているつもりはない)をつくので、毎日疲れきってしまいます。
もともと自閉症気味だったところに、J医大病院での脳外科手術ミスで脳障害となり、常に見張っている必要のある人になってしまいました。体は元気ですから、暴力を振るうようになったら怖いですね。周りもそれを心配しています。

レビーの伯母を見送ったと思ったら、兄が高次脳になり、両親と兄の3人を介護。唯一の光明は、発達障害の娘がしっかりしてきたことです。母が3歳児、兄が小1、父が小6、19才の娘が中一といったところでしょうか。
リハビリに週4回通っていますが、「長い目でみてあげて」と言われるばかり。確かに5年以上もリハビリしている人でも、社会で生きていくにはかなり難しい状態。これから先、ヘルパー無しでは生活は出来ない現実を思い知らされました。

No title

くりちゃん、おかえりなさい。ずーっと待っていました。
とてもうれしいです。


先日、TED(Eテレで水曜の6am〜。夜も。大好きでいつも見てます。)で、
義足の話をしてたんです。
「人間は、壊れない!
 壊れているのは、障害を補うことのできない人間の技術だ!」

という言葉が、印象的でした。

裸眼では、何も見えない人もメガネやコンタクトで、全く普通に生活できる。
同様のことが、あらゆる病気や障害で可能になれば
どんな障害も障害ではなくなる
普通に生活し、
誰も障害者と思わない(誰もド近眼の人を障害者と思わないように)
という意味です。

高次脳機能障害は、
誰でもが、今日なる可能性を持っていますよね。
でも一般の人は、
その名称も 具体的な症状も 改善の方法も 知らないから
ご本人もご家族も
どこまでも追い詰められてしまうと思いました。

(これは技術の問題ではなく、周囲の人間が作り出す障害の話ですが)

認知症もです。
多くの方が、「認知症なんて(種類があったとしても)全部一緒。
物忘れがひどくなって、だんだん色々なことが出来なくなっていって、
人格が崩壊して、やがて廃人になる」

というような、事実とは、まったく違う捉え方をしていることが
ご本人やご家族を 限りなく苦しめ、追い詰めている
私は、思っています。

とはいっても、障害を補う技術も 世の中の多くの人々の意識も
今日明日変わることはないです。
現実的に、大変な介護を背負い込む家族は、
毎日毎日24時間休みなくトラブルと格闘し続け、心身ともに疲れ切って、
多くの方が、ご病気になっていますよね。

その時には、いかに「逃げる」かを 本気で考えて頂きたいです。

私の周りで「疲れ切ってしまう方」に共通するのは、

 ●能力が、高い(人に助けてもらわなくても自分でできる)
 ●まじめで、誠実で、責任感がとても強い
 ●家族思いで、思いやりが深く、心が優しい


ヘルパーに、介護職員に、医療職員に、親戚に、友人に、近所の人に、
お願いして、1つでも多くの手を借りることを考えて下さい。

誰もあなたほど細やかには、ケアできないとしても
ご家族は、あなたが倒れることを 決して望んではいません

子ども不幸になることを望む親は、いないと思います。

だからできる限り、任せられる部分は、人任せにしても
それは、決して親不孝でも、裏切りでも 何でもないと思います。

施設に預けることは、家族を捨てることなんかじゃない
そうしなければ、介護者が倒れて、介護が破綻するという時があるんです。
共倒れや介護心中になるよりも、
距離を置くことで、お互いが生き残り、お互いが元気を回復し
また穏やかに笑い合える日が、必ず来るんです。
私の母と家族がそうでした。

一番大切なのは、自分です。
難しいけれども 自分を大切にする ということに頑張ってみて下さい。

No title

子育てと違う所は、成長が無く、退行だということでしょうね。
相手を導こう、教育しようとすると、介護者の方が疲れてしまいます。
「子育て」ではなくて、「子守り」くらいの軽い視点がいいんじゃないかな?
彼等は育たないから・・・

育児と介護

kimiさん、コメントありがとうございます。

私は、あまのじゃくで、ちょっと違う見方をしてるんです。

確かに子どもの成長のあり方を「成長」と考えると、
認知症と共に生きている方々に「成長」はないです。

でも違う意味の、
何か育っていくもの、創りだされる価値のようなものは
必ずあると信じています。

家族の力を結束するもの、
家族に人生を教え、成長させるもの…
例えば、そんなものでしょうか。

私は、認知症の母と居るとほっとするんです。
母から得ているものが、たくさんあると感じます。

それは、周囲の「成長」であって、本人の「成長」じゃない
と言われそうですが、
彼らは、周囲を成長させる存在に「成長する」と
私は、(無理にでも)思いたい気がします。

「どんどん出来なかったことが出来るようになっていく」
という「成長」だけを「成長」とすると
(そして「成長」こそが、素晴らしいとすると)
そうできない非常に多くの人達は、存在価値がないということになります。

いえ。kimiさんが、その全く逆の考え方をする方ということは、
よく知っています。

これは、一般論です。医療職、介護職の方からでもよく聞く言葉です。
「育児には、希望も喜びもあるけれども
死んでいくだけの病人の世話には、何の希望も喜びもない」

例えば、私が、ホスピスで傾聴ボランティアをしていた頃、
たくさんの人に言われました。
「そんなことして何になるの?気が滅入るだけじゃない?」

でも、そこには、たくさんの希望も喜びも感動もあったんです。
ものすごくたくさんのことを教えて頂いたんです。

認知症介護は、時には、地獄のようにもなりますが
正面から向き合って、愛をもって世話した家族は、
認知症を病んだ家族から、
最終的には、膨大な贈り物を与えられる…
私は、そんな風に信じているんです。

追記:
すみません。kimiさんの要点からすっかりずれちゃいましたね。

「認知症と生きる家族に、教え込まないようにする」
というのは、とても重要なポイントだと思います。

昨日までできたんだから、今日だって頑張ればできる!』と思い
叱咤激励してやらせようとするのは、どこの家も同じです。

私の父は、要介護5になった(4年間歩いていない。)母を
羽交い締めにして無理矢理立たせ、「歩け!歩け!」と叱りつけます。

トイレの失敗は、特に、家族が感情的に叱りつけることが多いですよね。

特に、レビー小体型認知症は、
しっかりしている時は、とてもしっかりしているので
言えばわかる、やればできる、できないはずはないと思えます。
(実際、言えばわかることも多いです。)

でも本人にとっては、頑張ってもできないことを叱りつけられることくらい
辛く、悲しく、情けなく、孤独なことは、ないと思います。

『どうして、こんなことが、できなくなってしまったんだろう』
本人が、心の底で深く傷ついているところに、
コテンパンに、100%一方的に、徹底的に責められ、叱られる訳ですから。

BSでやっている朝ドラ「カーネーション」(再放送)で、
老いた主人公(夏木マリ。若い時代は 尾野真千子)が言っていました。

年をとるということは、
今まで当たり前にできていたことが、できなくなっていく情けなさに耐え、
これからどんどん できなくなることが増えていくことの怖さに耐えること、
たった一人で…」
プロフィール

<しば>

Author:<しば>
私は認知症について希望を持てる情報を集め、共有している一介護家族です。医療・福祉の従事者ではありません。

特定の医師・治療法等へのこだわり、信仰する宗教はありません。
認知症に関連するビジネスもしていません。
掲載する情報は正確・公正であるよう努めています。

このブログ内の記事は、出典さえ書いて頂ければ、自由にコピーして資料等として使って頂いて構いません。リンクもご自由に。

’13年5月から「レビー小体型認知症介護家族おしゃべり会」(全国に広がる家族会)公式サイトに「しば記者デスク」「体験記」というコーナーを頂き記事を連載中。(こちらの記事は会に著作権があります。)

ツイッター:しば@703shiba

*レビー小体型認知症の症状やチェック方法は、カテゴリの一番上「症状チェック」を。


母 '05パーキンソン病と診断。’10.3月要支援2→要介護4へ激変。5月レビーと診断。2度の転倒骨折入院の後、自宅介護が困難に。8月末グループホーム入所。’11年3月に圧迫骨折で寝たきりに。7月特養入所・要介護5に認定。'12年要介護4に回復。’14年なぜか要介護5になるが穏やかで普通に会話が可能。
S13(1938)年生まれ。

父 ’10年9月ピック病(前頭側頭型認知症)と診断。
昭和2桁生まれ。

私 ’60年代生の女性。300km離れた所に住む。日々の介護はきょうだいに頼り’10年から月1回、’12年から1〜2ヶ月に1回帰省。

好きなこと:読むこと・書くこと・草花の写真を撮ること等々。

*記事に付けた花の写真は私が撮影したものです。

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