レビー小体型認知症は「認知症」なのか?(1)

レビー小体型認知症と生きる方々を取材させて頂きながら、私は、レビーを「認知症」と呼ぶことに強い違和感を感じるようになってきている。3人の例を挙げる。

   <Yさん(89才)の場合>(インタビューの相手は、Yさんの娘さん。)

Yさんは、英語の勉強や古典文学、文章を書くなど知的活動を愛して生きてきた方
79才でうつ病、81才でアルツハイマー型認知症と診断(誤診)された。
81才でデイサービスに通い始めるが、その単純過ぎる活動内容が、とても苦痛だった。
「デイでは、(本来の知的な)自分を見せないようにしている」と語った。

82才の時、強い知的欲求に応えようと娘さんが英語の家庭教師をつけると大変喜ばれた。
以後6年間、家庭教師(介護福祉士・障害児教育経験者)は、心の支えとなり続けている。

84才の時、「(デイに行きたくないが、行かなければ娘が困るので)”行かなくちゃね”と言ってデイに行っている」と娘さんが、ある医師に話した。すると医師は言った。
「そういう発言は、アルツハイマー型らしくないレビー小体型のような感じがする」
その言葉が、誤診に気付くきっかけとなった。

(過去の記事→Yさんが猫を飼った時の様子

   <パーキンソン病と診断されていた私の母(75才)の場合>

せん妄」そして「BPSD」がひどく、71才でグループホームに入所。
しかし慢性的なせん妄で、デイサービスを拒否した時でも「家族は睡眠不足で大変苦しい。昼寝をしてまた元気にお世話をしたいのでデイに行って欲しい」と頼むと「わかった。行きたくないけど行くね。ゆっくり休んで」と言う時があった。

現在、母の会話能力は、病気になる前の母とほとんど変わらない。(→詳細
幻視、妄想、記憶の混乱は、時々混じるが、病前の思慮深さが、そのまま残っている
(母はまた「私だって人の役に立ちたい。仕事がしたい」と何年も言い続けてきた。)

(過去の記事→母の言葉本人が語る症状母の知的能力は測定できるのか

   <うつと自律神経症状だけが目立つKさん(50代)の場合>

発症から10年若年性レビー小体型認知症Kさんも2人目の主治医が「認知症は、まったくないですよね?」と言う程。注意力低下等を自覚するが思考力に衰えはないと語る
(過去の記事→体験談治療と経過本人が語る症状

 *(2)に続く(レビーを重度認知症のように見せる「せん妄」を解説)

<参考>
「レビー小体型認知症は、調子の良い時には、まるで普通の人のように話をする
齋藤正彦医師講義動画の6分17秒目。(冒頭にパーキンソン病との関係も)

「レビー小体型認知症の場合、初期には記憶力や理解力などに著しい低下がみられないため、一般的な認知症だとは認識されにくい面がある。(略)海馬の萎縮が少なく、健康な人と同程度といっていい例もある」
(小坂憲司著「第二の認知症」P.76〜P.79)

認知症のないレビー小体型認知症の症例があるという報告レビー小体型認知症研究会

<関連記事>
体験記(T.H.さんの御主人も認知機能の低下がない)
*「レビーの家族を薬で悪化させない方法」(飲ませてはいけない薬一覧
*「若年性レビー小体型認知症 Hさんの体験談」(リンクもご参考に)
*「河野和彦医師の認知症セミナー」(レビーが劇的に良くなる方法と可能性)
*「若年性認知症 普通の人として普通に暮らす
*「認知症のわたし(朝日新聞連載記事)
*「NHKある夫婦の記録「隠したって何もないもん」
*「若年(性)認知症の方とその家族が直面している経済的問題と対策

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萩(ハギ)
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レビーで一番難しいのは

レビーの方は、行動パターンの乱れを感じても、客観的に認知機能の低下を確認することが、難しいケースが多い印象があります。
そういう点から、レビー小体病と言った方が良いかもしれません。

ただレビー小体病も、レビー小体は疾患特有の変化でなく、他の要因で神経細胞にダメージが加わった時に生じる変化を、細胞内から取り除こうとして出来る変化と言われています。
レビーとパーキンソン病はレビー小体ができる事以外にも自律神経障害が共通しているのですが、私はこの二つは全く別の疾患と最近考えています。
レビーは、脳幹部の神経伝達物質(アセチルコリンとドパミン)の減少により、パーキンソン症状や精神症状・前頭葉の機能障害・せん妄などが起きていると考えた方が良いのではないかと思っています。
レビーの場合、中脳の黒質領域にはレビー小体ができませんが、パーキンソン病と同様この領域のドパミン減少により、パーキンソン症状が出ていると考えた方が良い。との思いが強いです。

hokehoke先生  

コメントありがとうございます。

少し、私の頭を整理させて下さい。

脳幹(中脳の黒質など)に「レビー小体」があらわれるとパーキンソン病に、大脳皮質に広くあらわれるとレビー小体型認知症になる。
(小坂憲司著「レビー小体型認知症の介護がわかるガイドブック」P.15)

「レビー小体」の存在する場所とドーパミン、アセチルコリンの減少とは、関係がないということでしょうか?

私は、脳のことは、さっぱりわからないのですが、レビー小体型認知症でもパーキンソン症状が出ない患者というのは、ドーパミンの減少がないからと単純に考えて良いのでしょうか?
なぜドーパミンが減少しないのでしょうか?

教えて頂けましたら嬉しいです。

No title

レビーの脳幹部の障害の理由はいまだ判りません。
ただ私の経験では、脳幹部の一過性脳虚血が非常に多かったのです。
この時、せん妄を起こしているのが確認できています。
脳幹部や大脳基底核領域・視床周囲や前大脳動脈領域(前頭葉)などの血流が不安定になりやすい事は確かだと思います。

血流の不安定さが、神経伝達物質の合成など神経細胞の機能に影響を与える可能性はあると思います。

レビーの方は、動脈硬化が強いと言う印象です。そうすると、大脳基底核周辺にラクナ梗塞を多発する事も説明できます。
脳血管性認知症と診断されるケースが多いのも、当然かもしれません。
脳幹部の脳梗塞を起こし、脳ヘルニアを起こして亡くなるケースも珍しくありません。
レビーの場合、脳幹部のアセチルコリンの減少や、中脳のドパミンの減少が強いと思われます。
中脳のドパミン減少が少ないケースの場合、短期記憶障害やパーキンソン症状が目立たないと思われます。この場合、アセチルコリンの減少はあると考えられ、相対的に脳内(主に大脳辺縁系)のドパミン増加により妄想が目立つ様です。
レビーで、問題になるのは、ドパミンの増加による思い込みの強さから妄想がでやすい事。アセチルコリンの減少による活動性の低下(抑うつ症状)などの精神症状が問題になるケースが少なくない印象です。
あとセロトニンの異常(過剰もあり)による不定愁訴(心気症)なども多い印象です。
前頭側頭型認知症と同様、アルツハイマーで障害される皮質認知症と呼ばれる知的障害は目立たないケースが多いです。
レビーで一番難しいのが、認知症である事を確認する事でしょうか。
幻視も本人が隠そうとしているためなかなか大変です。
唯一積極的に確認できるのは、パーキンソン症状に代表される錐体外路症状です。しつこく、繰り返し確認する事で、進行性の錐体外路症状が確認できる事が多いです。
高齢発症する進行性の錐体外路症状は、多くはレビーに伴うと考えています。最近は進行性核上性麻痺などでは、不全型が多いのではないかと言われていますので、LPCに進行性核上性麻痺などが結構いると考えた方が良いと言う意見もあります。

レビーの脳内の仕組み

詳しい解説、ありがとうございました。

レビーと比べるとシンプルに見えるアルツハイマー型の仕組みすら中々わからないことを考えると、多様な病態を示すレビーの脳内がどうなっているかということが解明されるのは、まだ時間がかかるのかと想像します。

介護家族としては、システムはどうでもいいから、効果的な薬を早く見つけて欲しいというのが本音でしょう。

昔からあった抑肝散が、レビーの幻視に効くとわかったように、以前からあった薬が、レビーにも効果的だと次々とわからないだろうかと思ってしまいます。

薬以外にも食べ物や運動、生活習慣、東洋医学でアセチルコリン、ドーパミン、セロトニンを正常化させる確かな方法が、確立されないものでしょうか。
プロフィール

<しば>

Author:<しば>
私は認知症について希望を持てる情報を集め、共有している一介護家族です。医療・福祉の従事者ではありません。

特定の医師・治療法等へのこだわり、信仰する宗教はありません。
認知症に関連するビジネスもしていません。
掲載する情報は正確・公正であるよう努めています。

このブログ内の記事は、出典さえ書いて頂ければ、自由にコピーして資料等として使って頂いて構いません。リンクもご自由に。

’13年5月から「レビー小体型認知症介護家族おしゃべり会」(全国に広がる家族会)公式サイトに「しば記者デスク」「体験記」というコーナーを頂き記事を連載中。(こちらの記事は会に著作権があります。)

ツイッター:しば@703shiba

*レビー小体型認知症の症状やチェック方法は、カテゴリの一番上「症状チェック」を。


母 '05パーキンソン病と診断。’10.3月要支援2→要介護4へ激変。5月レビーと診断。2度の転倒骨折入院の後、自宅介護が困難に。8月末グループホーム入所。’11年3月に圧迫骨折で寝たきりに。7月特養入所・要介護5に認定。'12年要介護4に回復。’14年なぜか要介護5になるが穏やかで普通に会話が可能。
S13(1938)年生まれ。

父 ’10年9月ピック病(前頭側頭型認知症)と診断。
昭和2桁生まれ。

私 ’60年代生の女性。300km離れた所に住む。日々の介護はきょうだいに頼り’10年から月1回、’12年から1〜2ヶ月に1回帰省。

好きなこと:読むこと・書くこと・草花の写真を撮ること等々。

*記事に付けた花の写真は私が撮影したものです。

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